今回の取材では、TOTOにおいて衛生陶器の開発を担当されている方に、ものづくりの姿勢や現場の工夫についてお話を伺いました。

桃枝理彰|TOTO株式会社 衛陶生産本部 衛陶開発第一グループ
TOTO株式会社では衛生陶器の最先端の開発手法の応用を推進し、現在も研究や商品開発に携わる。TOTOが取得した大便器の特許では発明者として名が刻まれている。さらに2018年度には新規性の高い高度な専門性を発揮し、TOTOグループの業績に大きく貢献した者に贈られる社内の賞を受賞。
トイレ開発を支える技術と職人の努力
開発部に進んだ理由と想い
運営:本日はお忙しいところありがとうございます。今回は、TOTOでトイレの開発に携わる桃枝さんにさまざまなお話を伺いたいと思います。
運営:桃枝さんは開発部のエースと伺っていますが、入社当初からずっと開発に携わってこられたのですか?
桃枝:いえ、最初は海外事業関連の部署にいました。そこで「衛陶製造実習」という現場の製造体験を経て、「開発の仕事がしたい」と強く思うようになり、自ら希望して開発部に異動しました。
運営:製造の現場を経験したことが開発部へ進む大きなきっかけだったのですね。もともとトイレに対する関心はあったのでしょうか?
桃枝:はい。トイレを通じて節水や環境への貢献がしたいという思いがあり、入社時から開発にも興味を持っていました。その思いを形にするために、開発の道を選んだんです。
運営:ご自身のやりたいことを実現されているのですね。開発に携わっていると、日本以外の国ではどんなトイレが使われているのか気になることもあるのでは?
桃枝:そうですね、海外の展示会を見に行ったりはしています。
運営:今まで見た中で、特に「これはすごい!」と思った便器はありますか?
桃枝:うーん…やっぱり、どれを見ても「うちの便器が一番だな」と思いますね。自信を持って言えます!
桃枝:デザインは好みの問題もありますが、品質の面では誰にも負けないと思います。ただ、国や地域によってニーズは違うので、それを考慮してグローバルに展開していくことも重要だと感じています。
運営:なるほど。技術力という土台がしっかりしているからこそ、地域ごとのニーズにも柔軟に対応できるんですね。
桃枝:そうですね。お客様の求めるものに合わせて、それに応えられる良い製品を作ることができると思います。
トイレ開発の流れとこれまでの変化
運営:トイレの開発はどのような流れで進んでいくのでしょうか?
桃枝:市場の要望を受けて、「次の製品でどんな技術を取り入れるか」「どんなデザインにするか」といったアイデア出しから始まります。開発チームとデザインチームがそれぞれの視点で提案を出し合い、「どうやって実現しよう」を話し合いながら商品づくりがスタートします。
運営:最近はデザイン性の高いトイレも増えていますが、あまりにデザインを重視しすぎると、今の製造工程では作るのが難しい…ということもあるのでしょうか?
桃枝:はい、実現の難易度が高いものもありますね。トイレに使われる陶器は焼く過程で縮む性質があって、サイズが約13%ほど小さくなってしまうんです。そのため、均一な形に仕上げられるかどうかは製造チームとも話しあって、細かく調整しながら進める必要があります。

桃枝:昔と比べて、今はデザインの重要性がかなり高まってきました。以前は機能性が重視されていた印象がありますが、今では機能はもちろん、デザインの重要性も非常に高まっていると感じます。
運営:時代とともに、トイレに求められる役割も変わってきているんですね。
桃枝:そうですね。最近では、トイレは「ただの生活設備」から「くつろげる空間」や「見せる・飾る空間」としても捉えられるようになっている気がしています。社内のデザイナーたちは、そうしたイメージを“静かなる存在感”と表現して、開発のベースにもなっています。
運営:私はトイレを毎日何気なく使っているせいか、「もっとこういう機能があればいいのに」と考えたことがほとんどありませんでした。他の商品と比べてもニーズを拾うのが難しそうに感じますが、どうやって調査されているのでしょうか?
桃枝:社内から「こんな商品を作ってみたい」という声が上がることもありますし、私自身もトイレの一使用者として「こういう便器ならもっと使いやすいかも」と常に考えていますね。
桃枝:それに加えて、家族に使い心地を聞いてみたり、実際にお使いいただいているお客様のアンケートからお困りごとやご要望を把握し、商品開発に活かしています。開発者も含めて全員が“ユーザー”であるというのは、トイレならではかもしれないです。
設置場所や国によって変わるニーズ
運営:設置される場所によっても、トイレに求められることは変わってきますか?
桃枝:もちろんです。たとえば、公共施設や病院、介護施設などでは、住宅とは異なるニーズがあります。車いすの方が使用できるバリアフリートイレや、オストメイトに配慮した商品や乳幼児連れの方を配慮した設備など、求められる機能は多岐にわたります。
運営:そういった場所では、デザインよりも機能が重視されるのでしょうか?
桃枝:そうですね、公共の施設や医療・介護の現場では、やはり機能性が重要視されています。
運営:国によっても、トイレに対するニーズは違ってくるのでしょうか?
桃枝:はい、国による違いももちろんあります。たとえば日本ではシンプルなデザインが好まれる傾向ですが、中国では華美なデザインが好まれることもあります。国ごとに好まれるデザインや機能の“見せ方”がかなり異なります。
運営:なるほど、そういう違いがあるのは面白い反面、メーカーとしては大変ですよね。やはり、それぞれの国向けに違うものを製造するようになるのでしょうか?
桃枝:そうですね。もちろん国ごとのニーズには対応する必要がありますが、すべてを個別に開発していては時間がかかってしまいます。そこでまずは、各国のニーズをできるだけ集約し、共通仕様での開発ができないかを検討します。それでも対応しきれない部分については、国ごとに個別の仕様で開発を行うことになります。
運営:地域によっては、トイレの形状にも違いがあるようですが、例えばアメリカでは便器の高さが高いと感じました。あれは現地の規格なんでしょうか?
桃枝:そうですね。アメリカでは設置場所によっては法律で便器の高さが定められていて、日本よりも高めに設計されています。
桃枝:形状だけでなく、水の使い方にも国ごとの違いがあります。たとえばアメリカでは、1990年代に深刻な水不足が起きたことをきっかけに、「1回の洗浄水量は6L以下」という厳しい節水基準が、一部の地域の法律で定められました。当時の日本では、1回の洗浄で約10L使っていたので、アメリカの規制はかなり厳しかったと思います。
節水性能と流れやすさの両立について
運営:ものづくりの現場では、性能とデザインのバランスに苦労することがあると聞きます。たとえばトイレでは節水を重視するとつまりやすくなるという話を、修理業者さんから聞いたことがあります。最近の節水型トイレは進化していると伺いましたが、つまりの心配はないのでしょうか?
桃枝:はい、TOTOでは「きれいに見える」ことだけでなく、「しっかり流れる」ことも大切にしています。便器の中で汚物が見えなくなるだけでなく、排水管をきちんと流れていく搬送性能まで考えて設計しているのでご安心ください。
運営:工場見学の際に「便器のトラップ部分にも釉薬(ゆうやく)を塗っている」とお聞きしましたが、それもスムーズな排水やつまり防止につながっているのでしょうか?

桃枝:はい、その通りです。便器のトラップ部分まで釉薬を塗ることで表面を滑らかにし、排水がスムーズに流れるよう工夫しています。また、排水経路とトラップをつなぐ「ソケット」と呼ばれる部品の形や角度も細かく調整し、より流れやすい形状になるよう研究を重ねています。
桃枝:以前は、便器の汚物や水が流れる部分を毎回手作りして、水を実際に流して改良する、という非常に手間のかかる方法をとっていました。でも今では、流体解析や3Dモデルを活用して、水の流れを可視化しながら、効率よく検証・開発できるようになっています。
運営:以前は研究のための試作品を毎回作っていたのですか?
桃枝:そうなんです。たとえば、TOTOが1914年に国産初の洋式便器を作ったときには、17,000回以上の試作と検証を繰り返して完成にたどり着いたそうです。
運営:製品の裏には、私たちの想像以上の手間と努力があるのですね。
桃枝:はい。現在は、TOTO独自の「割掛け解析」や「変形予測」といった技術によって開発の効率が高まっていますが、それでも陶器の扱いは難しいです。
桃枝:焼き物は樹脂部品と比べてばらつきが出やすく、特にネオレストのような便器とウォシュレットが一体型となっているタイプでは、下部が陶器、上部が樹脂部品という異素材の組み合わせになるため、ぴったり合うように仕上げるのは本当に難しいですね。
運営:そのうえで量産となると、さらに難易度が上がりそうですね。
桃枝:まさにそのとおりです。TOTOの社是に「良品」だけでなく「均質」が掲げられているのも、そういった背景があるからなんです。
運営:工場で、石膏型に泥漿(でいしょう)を流し込んで成形する様子を見せていただいたのですが、あの石膏型も社内で作っているのですか?

桃枝:はい、衛生陶器用の石膏型はすべて社内でつくっています。製品ごとの形状にぴったり合うよう、細かい調整を重ねながら仕上げているんですよ。
職人の技と最新技術による品質管理
運営:先ほど衛陶工場を見学させていただきましたが、皆さんが高い精度で作業をされていて本当に驚きました。便器の成形も体験させていただきましたが、少しのズレでも仕上がりに大きな差が出ることを実感しました。そうした技術を支える教育や技術の伝承にも、かなり力を入れていらっしゃるのではと感じました。

桃枝:そうですね。熟練の職人や経験豊富なスタッフが、新しく入った人に丁寧に教えるという形で、技術をしっかりと受け継いでいます。
桃枝:また、施釉(せゆう)工程などではロボットも導入しています。ただロボットを使えば簡単に済むというものではなく、人の手の繊細な動きを再現するために、細かな調整を何度も重ねています。まさに、職人の感覚をロボットに「教える」という作業です。
運営: あの現場で一人前として作業ができるようになるには、どのくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
桃枝:担当する工程によって異なりますが、一通りの作業ができるようになるまでに年単位の時間が必要です。特に職人として技術を極めるには、それ以上の年月がかかりますね。
運営:そう考えると、あの現場で働いているのは職人としての資質を持ち、たゆまぬ努力を重ねてきた方ばかりなんですね。
桃枝:はい。ひとつの工程に長く携わって技術を極める人もいれば、さまざまな工程を経験して多能工としてスキルを広げていく人もいます。どちらの道を選ぶかは、本人の適性やチャレンジしたいことによって変わっていきます。
世界の職人たちが技を競う衛陶技能選手権
運営:TOTOでは、世界の職人が“トイレづくり”の技を競い合う「衛陶技能選手権」も開催されていますよね。選手権では、海外の方も活躍されていると聞きました。
桃枝:特にベトナムからの参加者の熱意は本当にすごいです。それを見て、他の地域のスタッフも良い刺激を受けていると思います。
桃枝:この選手権は国別の対抗戦というわけではありませんが、海外工場からは国内予選を勝ち抜いてきた代表者たちが参加しています。だからこそ、現場の期待を背負って真剣に取り組んでいて、大会が終わるとすぐに次回に向けて練習を始めるという人も多いんです。その姿勢には、私たちも刺激をもらっています。
進化するトイレ技術と利用者の新しい意識
毎日使うトイレで健康チェック?
運営:トイレはただ“用を足す場所”というだけでなく、掃除のしやすさやお手入れのしやすさなども含めてひとつの空間として捉えると、まだまだ工夫できることがありそうですね。ちなみに、次の製品に向けたロードマップや、新しいアイデアを集めるような仕組みはあるんでしょうか?
桃枝:はい、長期的に「こういう商品を目指していこう」というビジョンはすでにあります。これまでは、水を少なく使う、汚れが付きにくい、といった“トイレ本来の機能”に注目した製品が多かったのですが、これからはトイレに関わるさまざまな情報を活用し、健康やIoT、AIといった要素も組み合わせながら、より広い価値を提供できる方向へ進化していくと考えています。
桃枝:TOTOでは、新機能「便スキャン」を搭載したウォシュレット一体形便器「ネオレストLS-W」「ネオレストAS-W」を2025年8月1日(金)に発売します。これは、特別な操作をしなくても、普段通りにトイレを使うだけで便の形(硬さ)・色・量を自動で計測し 、その結果がスマートフォンのアプリ「TOTOウェルネス」に届くという仕組みです。
運営:8月の発売が楽しみですね。朝起きてトイレに行くだけで、毎日の便の状態や傾向を手軽にチェックできる時代が来るんですね。データに基づいて生活の気づきとなる情報を提供してくれるのはすごいですが、毎回ちょっと緊張しそうです(笑)
桃枝:確かに(笑)。毎日使うトイレでデータの傾向を把握できるようになれば、ご自身の生活習慣を見直すヒントになるのではないかと考えています。
桃枝:TOTOでは、マテリアリティ(=重要課題)の「きれいと快適」に2024年4月から「健康」を加え、TOTOならではの価値創造をめざしています。今回の新商品は、その考え方に基づき「健康に寄り添う」という新たな価値を提案するものです。無理なく自然と続けられる健康習慣「デイリーウェルネス」を、この商品で実現したいと考えています。
桃枝:「健康」といっても、先ほどお話しした「デイリーウェルネス」のことだけではなく、清潔で衛生的な生活そのものが健康に直結している、という考えも含まれています。
清掃負担軽減や故障検知も!施設向けスマート技術
運営:アンケートで寄せられる要望の中には、「今の技術では難しいけれど、確かにその通りだな」と思うような内容もあるのでしょうか?
桃枝:ありますね。たとえば「水をまったく使わないトイレが欲しい」といった声などは、今すぐの実現は難しいけれど、将来的な可能性を感じます。
運営:そのような声は、家庭向けだけでなく公共施設などからも届くのでしょうか?たとえば「清掃の負担やコストを減らしたい」といったような。
桃枝:はい。施主様、清掃スタッフ、利用者、それぞれの立場によって求めることは変わってきます。施主様はランニングコストを気にされることが多いので、水の使用量が少ない製品は特に注目されていますね。
桃枝:パブリック向けには、2021年から「パブリックレストルーム設備管理サポートシステム」というIoTを活用したサービスを提供してきました 。これは、蓄積されたデータをもとにトイレの利用状況を分析し、効率的な清掃タイミングや水石けんの補充計画を立てるなど、施設管理者の皆様をサポートするものです。
桃枝:そしてこの8月1日から、従来の管理サポート機能に加え、新たに施設利用者向けの「ユーザーコネクト機能」を追加し、「TOTO CONNECT PUBLIC」としてサービス提供を開始します。
桃枝:この新機能により、施設利用者はご自身のスマートフォンでトイレブースの混雑状況やベビーチェアの有無といった設備情報を確認できるようになります 。また、万が一トイレの詰まりや汚れなどを発見した際には、清掃などのリクエストをスマートフォンから送信することも可能です 。
運営:「水まわりのレスキューガイド」は主に家庭向けですが、こういったパブリック視点のお話もとても新鮮で興味深いです。
桃枝:管理の手間を削減する機能もあります。ウォシュレット管理清掃用リモコンではウォシュレットの温度設定や清掃時のノズル操作をリモコンひとつで行えます。また、トイレブースの温度が約26℃以上になると自動で暖房便座をオフにする暖房便座オフモードもあります。
トイレの使い方はどう変わった?清潔意識の変遷
運営:パブリック用のトイレといえば、男性用の小便器が昔はかなり大きかったと聞きました。現在のような幅になった理由はあるのでしょうか?
桃枝:昔からいろいろなタイプがありましたが、特に戦後は「大きいものほど高級品」という価値観があったので、高さも幅もかなり大きかったんです。子どもがかくれんぼで中に隠れられるくらいのサイズのものもありました。
桃枝:一方で、トイレが狭いけれど小便器をどうしても設置したいという家庭向けに、幅の狭いタイプを製造・販売していたこともあります。
運営:なるほど、時代背景や家庭事情によって使われる便器の形も変わってきたんですね。ちなみに、昔ながらの和式トイレは今でも製造されているのでしょうか?
桃枝:はい。数は減ってきていますが、今も製造は続けています。
運営:最近はほとんど見かけなくなりましたが、どういったところで需要があるのでしょうか?
桃枝:TOTOとしては洋式トイレをおすすめしているのですが、一部の自治体では「和式トイレの使い方がわからなくなってしまうと困る」という教育的な観点から、あえて和式を残している場合もあります。
桃枝:たとえば学校や市役所などで、「いざというときのために」と1台だけ和式トイレを設置していることがあります。
運営:そういえば、最近は男性でも座って用を足す方が増えてきたという話をよく聞きますが、実際はいかがでしょうか?
桃枝:そうですね。今はお子さんにもそうやって教えているご家庭が多いと聞きます。
桃枝:私自身はそういう教育を受けた記憶はないのですが、今はそれが当たり前になってきているので、社会が変わってきているのを実感します。「汚れたからきれいにする」から、「汚さないように使う」へと意識がシフトしていて、どちらも“きれいに保ちたい”という気持ちが根本にあるんですよね。その観点が、時代とともに少しずつ変化している気がします。
運営:なるほど、トイレの使い方や考え方も時代とともに進化しているんですね。普段何気なく使っているトイレですが、そこまで深く考えている方はあまり多くないと思います。
運営:そんな中で、ここまでトイレについて真剣に向き合い、細部にまでこだわって開発されているお話を伺えてとても興味深いです。
桃枝:ありがとうございます。私もつい、水の流れ方など細かいところが気になって見てしまうんです。多くの人にとっては“当たり前に流れるもの”かもしれませんが、見たことのない流れ方を見たときには、「どういう意図で設計されているのだろう」と考えることもありますね。

品質と理念を大切にするTOTOがつくる、長く快適なトイレ空間
高いシェアを支えるのは、受け継がれてきた理念と技術力
運営:工場見学や今回のお話を通して、TOTOの品質へのこだわりが強く伝わってきました。国内でトップシェアを維持されている背景には、やはり高い技術力や表現力など、さまざまな強みがあるのだと思いますが、特にどのような点が評価されているとお考えですか?
桃枝:TOTOでは創業当初から「きれいで快適な生活文化をお客様に届けたい」という強い想いを持って、技術を磨き続けてきました。その想いを大切にしながら積み重ねてきた技術が、多くのお客様の心に響き、評価されているのではと感じています。
運営:そのような考え方は、TOTOがトイレづくりに携わるようになってからずっと受け継がれてきたものなのでしょうか?
桃枝:TOTOはもともと衛生陶器の製造からスタートした会社ですから、「きれいで快適な生活文化を提供する」という理念は、創業当時から今まで大切にされ続けてきました。
桃枝:また、社是にある「良品と均質」という言葉も脈々と受け継がれていて、それがTOTO製品の品質や再現性の高さにつながっていると思います。
数字では伝えきれない品質を追求するTOTOのものづくり
運営:便器の形状についてお話を伺ったり、製造工程での収縮の様子を実際に見たりすると、焼き物って本当に繊細で難しい素材なのだと実感しますね。
桃枝:そうなんです。陶器は焼成の過程でどうしても収縮やゆがみが起こりやすく、とても扱いが難しい素材なんです。だからこそ、思い通りの形にきちんと仕上げるのは本当に難しいですね。
運営:それだけ難しい素材でありながら、TOTOの製品はどれも均一で美しい形をしていて、本当に驚きます。
桃枝:ありがとうございます。そうした仕上がりを実現できているのは、長年蓄積してきたノウハウと、細かな工夫の積み重ねがあるからこそです。見た目の美しさはもちろんのこと、使いやすさや掃除のしやすさといった機能面でも高い品質を保てるよう、日々改良を重ねています。
運営:トイレというと、どうしてもウォシュレットのような目に見える機能に注目しがちですが、陶器部分、つまり便器そのものも進化しているのですね。
桃枝:はい。トイレの品質の良さは、数値で表せるものではないため、カタログだけではなかなか伝えきれないんです。でも、実際に使っていただくとその違いははっきりと感じていただけます。だからこそ、ショールームなどで実際に製品を体験してもらえるような機会をつくり、品質の良さをしっかりお伝えできるように努めています。
桃枝:「形」と言っても見た目だけではなく、たとえば座ったときの座面のカーブなど、細部にまでこだわりがあります。今回のように、ものづくりの背景や思いを直接お伝えできる機会はとても貴重で、嬉しいです。
「リモデル」という考え方で、トイレ空間を“より快適”に
運営:新築から10年ほど経つと、少しずつ住宅設備の交換を考え始める方が増えてきますよね。今年はキッチンを新しくしようとか、給湯器を替えようとか。その選択肢のひとつとして、「トイレもそろそろ替えようか」と考えるご家庭も多いのではないでしょうか。TOTOでは「リモデル」という考え方を掲げていますが、それにはどのような意味があるのでしょうか?
桃枝:一般的に「リフォーム」というと、壊れた設備を修理して元の状態に戻す、つまり“マイナスをゼロにする”というイメージが強いですよね。私たちが使っている「リモデル」という言葉には、そこからさらに一歩進んで、“ゼロをプラスに変える”という意味を込めています。
桃枝:トイレの場合、最初は「便座だけ交換したい」とご相談に来られる方も多いのですが、ショールームで最新の便器をご覧いただくと、節水性能や清掃性、デザイン性の高さに驚かれて、「どうせなら便器ごと替えよう」と決断されるケースも少なくありません。やはり、まず知っていただくきっかけが大切だと感じています。
運営:トイレ空間全体を見直したいというニーズも高まっているように感じます。便器を交換するタイミングで、「床の汚れが気になるから一緒にやってしまおう」と考える方も多いと聞きます。
桃枝:10年、15年と使っていると、やっぱり汚れやにおいが気になってくると思います。そうした汚れは徐々に染み付いていくので、トイレが新しくなることでかえって周囲の古さが目立ってしまうこともありますね。
運営:先日、都内のショールームを取材させていただいたのですが、やはり実物を見ると「うちのトイレは古くなったな」と感じます。家電量販店やホームセンターにもデザイン性の高いトイレが並んでいて、見た目のかっこよさに惹かれて興味を持つ方も増えているのではないでしょうか。やはり、デザインの力は大きいですね。
運営:最近は丸みを帯びたデザインがトレンドになっている印象がありますが、やはり意識されているのでしょうか?
桃枝:たしかに、ネオレストNXのように丸みを帯びたフォルムは、陶器ならではの柔らかく膨らんだ形状をイメージしてデザインされています。ただ、すべてがそのスタイルというわけではありません。たとえばネオレストLSは、ウェーブラインや金属調のアクセントを取り入れることで、高級感と優雅さを感じられるデザインに仕上げています。
トイレ選びで後悔しないために大切なポイント
運営:水まわりのレスキューガイドでは、トイレリフォームを検討している方に向けて、製品選びの視点や重視すべきポイントをご紹介しています。記事ではさまざまなメーカーの製品を取り上げていますが、TOTOとして、これからトイレ選びを始める方に伝えたいメッセージはありますか?
桃枝:トイレは1回設置すると長く使うものです。だからこそ、見た目のデザインや価格、機能だけで比較するのではなく、「清潔さを長く保てるかどうか」という視点も持って選んでいただけると、後悔のない良い買い物になると思います。
運営:たしかに、見た目や価格では測れないけれど、日々使う上で非常に大切なポイントですね。TOTOはそういった“見えにくい品質”にも技術力を注いでいる印象があります。
桃枝:はい、品質の高さは他社に負けていないという自信があります。TOTOのトイレがきれいを長く保てるのは、技術力があるからこそできることだと思っています。
桃枝:購入した直後にきれいなのは当然ですが、大切なのは“5年後、10年後にどうなっているか”です。長く使うことで、TOTOの良さを実感していただけると思います。
運営:トイレは一度設置するとそう簡単に交換できるものではないですから、長く使ってどうなるかを事前に比較するのはなかなか難しいですよね。
桃枝:おっしゃる通りです。だからこそ、TOTOがどんな考え方で製品をつくっているのか、どんな技術が込められているのかをしっかり伝えることが大切だと考えています。信頼して繰り返し選んでいただけるメーカーでありたいですね。
運営:以前、TOTOの便器は排水口の奥まで陶器で作られている、という記事を拝見しました。他社製品の中には軽量な樹脂を使っているものもありますが、TOTOはそうした部分にもこだわっているんですね。
桃枝:そうですね。他社さんにもそれぞれの設計思想があって、それが良い・悪いという話ではありません。ただ、TOTOとしては「どうすれば長く清潔に使っていただけるか」を第一に考えて作るようにしています。
運営:実際にお話を聞くことで、陶器の持つ耐久性や衛生面でのメリットを改めて実感しました。一方で、コストや軽量化といった観点から別の素材を採用するメーカーもある。どちらが正解というわけではなく、それぞれの特徴を知ったうえで、自分に合った選択をしてもらうことが大切ですね。

技術と品質の裏側に触れて考える、これからのトイレ選び
今回は、TOTOで衛生陶器の開発を手がける桃枝さんにお話を伺いました。インタビューを通じて、トイレ開発の裏側やTOTOの高い技術力、そして品質への強いこだわりを改めて知ることができました。
普段何気なく使っているトイレも、多くの試行錯誤と細かな工夫の積み重ねによって作られていることを実感していただけたのではないでしょうか。快適な暮らしの陰には、確かなものづくりの力があることを感じていただければ幸いです。
トイレは毎日使うものだからこそ、機能性はもちろん、清潔さや耐久性、そして使う人へのやさしさを考えた品質がとても大切です。この記事でご紹介したTOTOの技術や開発者の想いを、トイレ選びの参考にしていただければ嬉しいです。
「水まわりのレスキューガイド」では、トイレリフォームを依頼できる業者の紹介のほか、予算や機能、デザインといった観点から自分に合ったトイレの選び方も詳しく解説しています。リフォームを検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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